見出し画像

事業成長に必要な人材を受け入れることで多様性を育み、次の成長へ向けて新たなDEIの在り方を模索する | 株式会社ツクルバ

「フェアな労働市場をつくる」をミッションに掲げるXTalentは、DEI向上を目指す企業を対象としたアンコンシャス・バイアストレーニング(以下、UBT)を提供しています。

様々な企業のDEIの在り方にフォーカスし、広く社会に発信することを目的にした「#DEIのカタチ」シリーズとして、UBTを受講した株式会社ツクルバ 執行役員 CHRO 藤田 大洋氏、人事企画 シニアマネージャー 小林 杏子氏にインタビューし、同社のDEIへの向き合い方やUBTの感想、他企業へのメッセージを伺いました。

【藤田 大洋氏 プロフィール】
執行役員CHRO 人事総務・広報本部長
1979年生まれ。立教大学社会学部産業関係学科(現:経営学部)卒業。グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(研究テーマ:変革のリーダーシップ)。新卒で株式会社アイルに入社し、人事採用チームの立ち上げマネージャーとしてIPOを経験。その後、2009年に株式会社アシストに参画。経営企画室マネージャーとして創業社長引退に伴う全社経営・組織変革プロジェクトを主導した後、2017年より株式会社ツクルバに参画。人事総務部長、執行役員CHRO兼ピープル&コミュニテイー部長などを経て、2022年2月より現職。

【小林 杏子氏 プロフィール】
人事総務・広報本部 人事企画シニアマネージャー
1991年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部国際政治学科卒業後、アパレル企業を経て、2016年に株式会社ツクルバへ入社。採用チームの立ち上げ後、上場前後のCIリニューアル、MVV策定プロジェクト等、複数の全社プロジェクトに参画し、2022年8月より現職。


事業成長とともに形成された、
DEIの思想


ーーツクルバ様の経営において、DEIはどのような位置付けにあるのでしょうか。

藤田:当社にとってのDEIの在り方は、事業によって形づくられてきたと言えます。ツクルバは、コワーキングスペース事業で創業しているのですが、デザイナーやクリエイター、起業家など多種多様な人が集まるコミュニティを運営する組織として、価値観の根底に多様性が自然と培われてきました。

その後に立ち上げた現在の主力事業である「cowcamo(カウカモ)」では、中古・リノベーション物件の仲介やリノベーションサービスを通して、自分らしい暮らしの提案をしています。

コワーキングスペースの利用者もカウカモのお客様も、自分らしい生き方を好む人が多いです。自分らしい働き方や暮らしは人によって異なる、という多様性を受け入れる価値観が世の中に広まることは、事業成長にとって大切だと捉えているんです。当社のDEIは、社員に限定したことではなく、お客様も含めた幅広いステークホルダーがその対象範囲なのだと思います。

小林:ツクルバ社内でどのように多様性と向き合ってきたかを振り返ると、明示的にDEIを推進してきたというよりも、会社の成長に応じて、その時々の経営にとって必要な要素をもつメンバーを受け入れてきた側面が強いです。その繰り返しによって、結果として多様性を活かす風土が少しずつ醸成されていったように感じています。

ーーDEIに関して具体的な取り組みはされていますか。

小林:DEIに限定したものではなく、組織文化を醸成するための取り組みはさまざまなものがあります。その中で、大切にしてきたのは社員同士の交流です。コロナ禍以前は、月1回は必ず正社員全員が集まり、共通体験をする場を設けていました。また、社内にキッチンがあるので、そこでの自主的な交流会も頻繁に行われていましたね。コロナ禍でこうした活動は中断されてしまっていたのですが、先日久しぶりに対面で全社員が集まってキックオフミーティングを開催したところです。

また、最近では人事内にインターナルコミュニケーションの担当者を配置し、各事業部内にも同じ役割を担うメンバーがいます。

ただ、組織文化の在り方については過渡期にあり、今まさに再考しているところです。これまでは、創業以来のミッションである「『場の発明』を通じて欲しい未来をつくる。」を組織の中心に据えて文化を形成してきました。

当社が歴史を重ね、中核事業がカウカモになっていく中で、ミッションとカウカモ事業の距離を感じる場面が出てきました。そのため、ミッション・ビジョンを再整理したうえで、組織の求心力のポイントを中核事業に寄せていこうとしている最中です。

藤田:創業当初からしばらくの間は、階層が少ないフラットな体制を取ってきましたが、上場やカウカモ事業の拡大に合わせて組織体制の変更を行ってきています。今は、不動産事業とIT事業が融合するカウカモが中核事業になったことを前提に、カルチャーや行動規範といった組織のソフト面に加えて、組織体制や人事制度などのハード面からも新たな姿を検討しているところです。DEIは、そこに組み込む要素のひとつとなります。


今後のDEIの在り方を考える
礎となったUBT


ーーUBTを実施したきっかけを教えてください。

小林:XTalentとは採用関連でお付き合いがあり、UBTをご紹介いただいたことがきっかけです。

話をいただいた際はDEIの推進策を具体的に検討していなかったのですが、今後より大事になるテーマであることも認識していたため、まずは知ってみよう、体験してみよう、という話になったんです。そのため、DEIを身近に感じやすいコーポレートのメンバーを参加者としました。

藤田:UBT当日の冒頭に、僕から参加者へこのトレーニングの意味合いを2点ほど伝えました。DEIも含めて人的資本開示の流れが起きている中で、ツクルバも対応していく必要があること。そして事業成長を目指すためには、UBTのような機会を通して積極的に学習し、ツクルバであればどのようなDEIの在り方があるのかを考えてほしいということです。参加者全員でDEIに向き合う機会にしたいと思っていました。

ーー小林さんは実際にご受講されて、どのような気づきがありましたか。

小林:まず、冒頭の藤田の話を聞いて、「一緒に考えていこう」というスタンスであることを感じました。私自身も、DEIが重要だとは認識しているものの、ツクルバにとってなぜ必要なのか、何を大切にしていくのかの明確な答えがなかったので、よい機会になりそうだと思ったことを覚えています。

実際に受講してみると、まずは理論として、DEIが経営や組織運営においてどのような価値があるのかを理解できました。今後、DEIのテーマを施策に落とし込む時が来れば、UBTで学んだ内容が土台となってくれると思います。

そして、参加者同士で共通体験をし、それぞれがもつアンコンシャス・バイアスを共有できた点もよかったと感じています。受講後は皆、臆せず自分のバイアスをメンバーに開示したり、「今の言葉はバイアスがあるんじゃないかな」などと伝え合っていますね。

藤田:僕のUBサーベイの結果も、マネージャー会議で共有しました。当社は社員同士がオープンに話し合う関係性があるので、他のメンバーも躊躇することなく自分のバイアスについて話をしています。これまで培ってきた組織風土があるから、受講後にこのような会話が自然とできているのかもしれませんね。

ーー他のご参加者からは、どのような感想が出ていますか。

小林:DEIは自身の業務と密接に関わるテーマであると感じたとの声が多く挙がりました。マネージャー層からは、マネジメントにおいては切り離せないテーマだとの感想もありましたね。UBTではリーダーとメンバーとのロールプレイも体験したので、自分自身に置き換えて考えやすかったのだと思います。

DEIに紐付けた直接的な取り組みは初めてでしたが、まずコーポレート部門では抵抗感なく受け止めてくれたようです。

多くの気づきや学びがあり、個々人のコミュニケーションやマネジメントには活かせている一方で、今後、組織としての具体的な施策にどう紐づけていくのかは模索中です。参加者は皆、組織レベルでの問題意識を主体的にもってくれているので、検討を進めたいと思っています。

柔軟に変化を受け入れる土壌が、
DEIを育んでいく


ーー今後、DEIにどのように向き合いたいと考えていますか。

藤田:当社は今、組織の転換点にあり、コロナ禍を経て働き方も変化が起きている中で、組織文化のアップデートが必要です。

また、当社は「VISION2025」を定め、さらなるインパクトを創出していくことを目指す方針を掲げています。ベンチャーとしての成長期待に応えていくために、活かせるものは活かし、行動すべきことは行動する姿勢をもっています。その要素のひとつであるDEIは、今後の当社の成長にとって、ますます強い変数になっていくでしょう。

ビジョン実現のためには、ツクルバという組織がこれまで以上に、社員やお客様、株主などあらゆるステークホルダーを受容する力が必要になります。たとえば「カウカモ」事業において、不動産やリノベーションを探す人が、当たり前のようにカウカモのサイトを利用してくれる状態を目指すとなると、包摂すべき多様性はまだまだあると思うんです。将来の企業価値向上を見据えると、DEIの重要性は増していると捉えています。

また、昨今の人的資本開示の流れを受けて、当社らしい人的資本とは何かを経営や人事部門で議論している最中です。今は、新しい「ツクルバ的DEI」を作っていくフェーズにいるのだと思っています。

ーーDEIへの向き合い方で悩まれている他企業の皆さまへ、メッセージをお願いいたします。

藤田:かつてのツクルバのように、社員数が数十名ほどのベンチャーは、足りないものだらけだと思うんです。現場の社員もマネージャーも足りないし、資金もショートする恐れがある中で、毎日を駆け抜けている状況ではないでしょうか。どうしても喫緊の課題に向き合うことの連続になるので、事業成長とは一見遠く感じるDEIの推進に真正面から取り組むのは、高コストに感じられるかもしれません。

なので、人材でいえば多様な人を計画的に採用するよりは、「入ってくれた人にどう活躍してもらうか」の観点がおのずと必要になります。小規模な企業では、入社した人によって組織内でのポジションがつくられるという、いい意味で「人に引っ張られる」組織運営になります。そのため、組織側が人の多様性を受け入れ、社員一人ひとりの力を活かしながら、目の前の難局を乗り越えていくしかないのです。

そうして会社が成長していくと、経営体制や組織運営がしっかりしてくる節目が訪れます。その後は経営上のテーマとして、計画的にDEIを推進するようになっていくのではないでしょうか。

組織の規模が小さいうちは、新たな人材を受け入れ、活躍できる環境をつくり続けること自体がDEIの推進になるのだと思います。

小林:当社は、弱い点や足りない点を補いながらここまで経営を続けてきました。不足を補う際に大切だと思うのは、組織内に新たなものを受け入れ、認め合う「柔らかい土壌」があることです。

もう一点大切なのは、会社の成長段階に応じて、その時々で守るべきものと変えるべきものを自覚的に切り分けることだと思います。組織変革のテーマは会社の成長とともに変化していくものですから、守るべきもの・変えるべきものも同じように変化し続けるでしょう。

変えるべきものを変えたとしても、「捨てた」ことにはならず、地層として積み重なっていくものだと思います。変えるべきものに執着することなく、会社の成長ステージに応じて変わり続けることも、多様性を育んでいくひとつのポイントになると考えています。



▼ 「#DEIのカタチ」シリーズはこちら

▼ ツクルバ社の企業理念はこちら

XTalent主催・共催 DEI関連イベントのレポートはこちら


ーSTAFFー
企画:筒井 八恵(XTalent株式会社)
取材・執筆:御代 貴子
撮影:森田 純典

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

Twitterで最新コンテンツ公開のお知らせをしています!ぜひフォローしてください!