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多様性を活かした会社創りとアライシップとは ー Play Forward | DE&I in Gaming, Japan 2022 イベントレポート #1

2022年11月8日(火)Meta 東京オフィスにて、「Play Forward | DE&I in Gaming, Japan 2022~多様性を活かした会社創りとアライシップ~」が開催されました。

テーマは、日本のゲーム業界におけるDE&I (ダイバーシティ=多様性、エクイティ=公平性、インクルージョン=包摂性)。DE&Iとは何か、より包摂的な環境と文化を社内外に浸透させるために何を行っているか、日本企業によるトークセッションが行われました。

今回は、XTalent 代表 上原 達也が登壇したPanel discussion「多様性を活かした会社創りとアライシップとは」のセッション内容をレポート形式でお届けします。

※「DE&I」「DEI」など企業によって表現が異なる言葉は、本記事では登壇者の使用する言葉を反映しているため、表記のばらつきがありますことをご了承ください。

<登壇者>
一木 裕佳
セガサミーホールディングス株式会社
執行役員 サステナビリティ推進室 室長
セガサミービジネスサポート株式会社
代表取締役社長

光岡 昭典
株式会社エイチーム
執行役員 / 社長室 室長

上原 達也
XTalent株式会社
代表取締役

<本レポートのポイント>
・誰もが活躍できる環境を創ることが、採用の間口拡大につながる
・DE&Iの浸透には、「制度と文化」両方のアプローチがある
・組織を変えるには、トップの強いコミットメントが重要

それでは、セッション時のトークに沿ってレポートします。


日本企業が抱えるDE&Iの課題は
「従来の価値観とのズレ」


───まず最初に、現在会社で実施している多様性を活かすための取り組みや制度を教えてください。

一木さん :弊社は、全グループの従業員共通で「感動体験を創造し続ける~社会をもっと元気に、カラフルに。~」というミッションを掲げており、グループ全体で、サステナビリティに関する5つの重要項目、サステナビリティのマテリアリティ(重要課題)を設定しています。

特に、「人」の項目では、DEIをしっかりと組み込み、「製品/サービス」についてもアクセシビリティ・ダイバーシティ・プライバシーの考え方について定量的な目標を定めており、DEIを事業成長の根幹として捉えています。


───プライバシーもDE&Iの一環として取り組まれているのですか?

一木さん :そうですね。製品・サービスを提供していく中で、例えばお子様のデータ管理や個人情報の取り扱いは非常に重要な位置付けです。プライバシー管理においてはDEIの考え方も反映していくべきだと考えています。


───非常に興味深いお話ですね。光岡さんはいかがでしょうか?

光岡さん:弊社はインターネット・スマートデバイス(スマートフォン・タブレット端末)をベースとしたゲームコンテンツ、情報サイトやECサイトなどの企画・開発・運営を行う総合IT企業です。

名古屋を拠点としながらも、スマートフォンゲームをグローバルに展開している観点から、世界中の人々に受け入れられるゲームづくりを追求し続けなければなりません。そのため、海外の文化に詳しい外国籍の社員が活躍できる土壌を整えていく必要があると考えています。

そこでエイチームが大切にする価値観を持つ人たちを、
"Ateam People"(エイチームピープル)として定義しました。すべての職種・職位において、国籍や人種、性別や年齢を限定することなく活躍できるよう、お互いを認め合う文化の醸成に努めています。

また弊社は、社員数約1000人のうち、45%が女性です。ライフステージの変化に応じて長期的に安心して働けるよう、『ファミリーサポート制度』を2017年に導入しました。子を持つ社員が自身のキャリアを諦めることなく、家庭との両立を実現しながら、キャリアを形成することができる制度として活用されています。

参照:https://www.a-tm.co.jp/sustainability/diversity/


───女性比率が45%。かなり高い印象を受けたのですが、採用の段階で何か取り組みをされているのでしょうか?

光岡さん:特に「女性だから」「男性だから」という理由で採用することはないですね。ただ、制度を整えつつ社内外の発信も非常に強化しているため、「性別にかかわらず、だれもが活躍できる会社なんだ」というメッセージが届くことにより、結果的に選ばれる会社になっているのかなと感じています。


───なるほど、そうなのですね。では、上原さんにも伺ってみましょう。

上原:弊社は「フェアな労働市場をつくる」をミッションに、人材紹介事業を展開している会社です。主に労働市場におけるジェンダーギャップ、ワーキングペアレンツの課題を解決するための事業に取り組んでいます。

  • withwork』 ワーキングペアレンツのための転職サービス

  • withwork executive』女性社外取締役のマッチングサービス

育児によって時間の制約があるものの、仕事への意欲やキャリア経験が豊富な方と、多様性への感度が高い企業をおつなぎする転職支援では、「なかなか女性の応募が来なくて困っている」という企業への採用支援を通じてダイバーシティを高めるサポートをしています。

一方、企業からは採用課題だけでなく「まだまだインクルージョンが進んでいない」という組織風土や制度に関する相談も多く寄せられます。そこでDEIコンサルティング事業を通じて、 経営層やマネージャー層に対するアンコンシャス・バイアス研修や、組織のサーベイを実施しています。今どのような課題があって、何から取り組めば改善されるのか。一つひとつ明確にしながらご支援しています。


そして私たち自身、企業にDEIの浸透を促す会社だからこそ、「何より自分たちが取り組んでいかないとだよね」という意識は高く持っています。ただ、まだまだスタートアップ企業なので、制度はそこまでリッチな状態ではないんですよね。

そこはカルチャーや働き方から高めていきたいなと考えていて、フルリモート・フルフレックスを導入しています。全国各地どこにいても働けるため、九州や四国に住んでいるメンバーもいますね。男女比も半々ぐらいです。他にも、持病や制約など、何らかの事情を抱えているメンバーも集まっています。

とはいえ、フルリモートではどうしてもコミュニケーション量が減り、心理的安全性が下がりやすくなるという課題もあります。それを打破するためにバーチャルオフィスを活用するなど、模索しながら取り組んでいる最中です。


───日本の企業にDE&Iコンサルティング事業を展開されていると伺いました。日本の企業が共通して抱えている潜在的な問題点があれば伺いたいです。

上原:そうですね、やはり従来の社会の価値観との断裂はすごく感じます。例えばこれまでは男性が外で働いて女性が家庭を守るという役割がベースにあった。でも今は共働き世帯の比率はどんどん高くなり、性別に関係なくキャリアを積む時代になっています。

ですがまだ私たちの心のどこかにアンコンシャス・バイアスがあり、「子どもが生まれたら女性は子育て中心になるよね」「男性は家庭を持ったらどんどん稼いでいかないとね」と捉えてしまうことってあると思うんです。

でも人によっては必ずしもそうではないんですよね。「子どもが生まれてもバリバリ働きたい」という女性もいれば「育児の時間を大事にするために仕事をセーブしたい」という男性もいる。そこで会社とのズレが生じ、違和感を持たれる方のお話をたくさん伺ってきました。まだまだ多様な価値観が浸透しきっていない企業の課題も多く見受けられますね。


制度の拡充だけでなく、
インクルーシブなカルチャー浸透を目指す


───では次の質問です。 今お話いただいた制度や取り組みを実現するために実施してきたことや、困難などがあれば、お伺いしたいです。

一木さん:弊社はゲーム事業において海外に7つの開発スタジオがあり、日系のゲーム企業ではおそらく最大規模のグローバルスタジオ体制であると思います。なので当然グローバルな価値観を全従業員が受容していかないと、良いチームワークで新しいゲームエンターテイメントを創造し続けていくことはできません。

各拠点、それぞれの国で異なる法律に対応する必要がありますし、DEI推進の為に多様な社内グループを設置しています。例えば、セガアメリカではDEIのスペシャリスト採用をする予定で、DEI戦略、実践、プログラム開発や実施などに注力する予定です。ヨーロッパにおいては『RISE』という社内グループがあり、少数派の人種の同僚にサポーティブな職場環境の提供を促進することを助けたり、北米では、先住民の企業研修コースを希望するスタッフを招き補助金を出していたりなど、多様な教育を従業員に提供する機会を設けています。

またグループ全体で、昨年から開催している『セガサミー・サステナブルウィークス』という2週間にわたるイベントでは、障がい者やLGBT+、環境、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンなどについて考える研修や講演会など、計17の催しを実施しています。

参照:https://www.segasammy.co.jp/japanese/sustainability/features3/

LGBT+においては、「LGBT+を理解・支援する人」を指すアライ(ally)への賛同を表明した全員に特製のストラップを配布し、意識向上につなげました。他にもグループ役員と部長層にアンコンシャス・バイアス研修を受けてもらったり、グループ役員と各社人事部を対象に障がい者理解体験型ユニバーサルマナー研修を実施。車いす利用者、視覚障がい者、聴覚障がい者、高齢者の4つの当事者体験・サポート体験を行いました。

その動画は全従業員が見ることのできるイントラポータルサイトで公開しています。さらにグループCEOの里見が自らDEIを推進する思いや理由を継続的にメッセージとして発信し、制度の拡充だけでなく、カルチャーとしても広がるように取り組んでいます。


───様々取り組んでおられますね、ありがとうございます。光岡さんは、いかがでしょうか?

光岡さん:先ほど申し上げた『ファミリーサポート制度』は、10年前に「女性が出産・子育てを迎えても働きやすい制度をつくっていこう」という構想からスタートしました。当時は社員数300人規模で平均年齢が30歳を下回り、若い女性社員が多く在籍していました。

そこでマネージャーや管理職の女性社員が、産休・育休に入った復帰後も安心して働ける制度が会社に必要なのではないかと経営課題としてあがったのが最初のきっかけです。

構想を始めた10年前は今ほど多様な価値観が浸透していなかったことや、初めての試みということもあり、なかなかスムーズにはいきませんでしたね。女性社員からは「会社にサポートしてもらうのは申し訳ないのではないか。自分で解決すべき問題なのではないか」という声もありました。「そうではなくて、一緒に会社をつくっていくために必要なんだよ」と伝えながら、経営陣も納得する制度づくりを粘り強く進めていきましたね。

───ちなみに、男性社員から「なんで女性だけ?」というような意見はなかったのでしょうか?

光岡さん:男性社員も「女性社員がやめてしまったら困る」という大前提はあったので「同じメンバーに継続して働いてもらうには、どうしたらいいんだろう?」という視点に立って考えていました。男性社員も制度設計には協力的だったと思います。


───アライシップがしっかりしているのが伝わってくるお話ですね。ありがとうございます。


組織コンディションの改善は
「リーダーの自己開示」から始まる


───次に、多様性を活かす会社づくりを始めたことによるメリットや組織として改善されたことについても伺えたらと思います。上原さん、いかがでしょう?

上原:1番わかりやすいのは、人材の採用ですね。弊社は今非常に採用に力を入れていて、昨年は社員2名だったのに対し今年は十数名にまで増えました。まだまだ認知度の低い会社ではありますが、多様性を活かす取り組み、働き方の柔軟性によって、優秀な人たちが集まってきてくれています。

さらに活躍する社員からは「ストレスなく働けていますよ」と言ってもらえていて、加えて心理的安全性の高さも感じてもらえているようです。組織サーベイも、非常に高いスコアを出せていますね。

とはいえ、まだまだ組織の課題は沢山あります。でも「今、自分はこんなことに困っています」「もう少しこうなったら、働きやすいです」など、言いづらいことも素直に打ち明けてくれるメンバーが多いんですよね。こういった文化が、組織のコンディションの良さにつながっているのだと思います。


───困っていることを上司・先輩に相談すると「自分の評価やプロモーションに響くのではないか?」という考えから、言いづらい場面もあると思うのですが、みんなが思っていることを言える環境づくりのために必要なこと、工夫されたことはありますか?

上原:「リーダーが弱みを見せること」は、すごく大事だと思います。「上司たるもの、強くあらねば!弱みなど見せない」という価値観もあると思いますが、むしろ部下からすると弱みをポロっと打ち明けてくれた方が「自分も言っていいんだ」と思えますし、上司をフォローしようという気持ちにもなりやすいと思うんです。自己開示がしやすい組織風土をつくるには、まず上司が打ち明ける。これはすごくおすすめですね。

───勉強になります、ありがとうございます!


DE&Iの実現には、
「トップの宣言」と「オープンな対話」が不可欠


───最後の質問になるのですが、DE&Iの取り組みに関して明日からできることがあれば、お一人ずつお願いします。

上原:登壇されているみなさんも同じ意見かなと思うのですが、やはり「トップのコミットメント」は非常に重要です。組織のトップ、グループのリーダーと言われるような人たちが、DE&Iに真剣に向き合うことから組織は変わっていくと思いますね。

その上で「明日からできる」という観点で1つ挙げるとしたら、まずは雑談ベースでいいので周囲の人と話してみてください。「多様性」ってすごく難しいテーマに聞こえますが、あまり考えすぎると、取っつきづらくなってしまうので。肩の力を抜きながら「難しいよね、どうしていこうか」と気軽に話せる雰囲気であることも大事だと思っています。

光岡さん:明日からできることで言うと、まず「トップが宣言すること」。会社が「多様性を受け入れます」というメッセージ発信をするのが1番大事かなと思います。あとはDE&Iに関して出た意見を、日々の業務や活動、制度に反映させながら少しでも実績がつくれると社内への浸透に役立つと思いますね。

一木さん:私もみなさんと同じく、トップの強いコミットは必要不可欠だと考えております。

と同時に、これだけ社会の価値観が急激に変化し、若い人たちの考え方も多様化している中で、どうすれば会社は変われるのか?それぞれの立場の人が意見を出し合うことも重要です。一人ひとりの問題意識を胸に秘めるのではなくオープンにしていくことが、DEIを実現するための一歩だと思いますね。



▼ 「#DEIのカタチ」シリーズはこちら

XTalent主催・共催 DEI関連イベントのレポートはこちら

▼ XTalent代表・上原のnoteはこちら


ーSTAFFー
企画:筒井 八恵(XTalent株式会社)
執筆:貝津 美里

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