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【withworkウェビナーレポート】 #キャリアと子育てのこれから

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新型コロナウイルスの流行をきっかけに、多くの企業でリモートワークが取り入れられました。と同時に、休校・休園で自宅保育になったご家庭も多かったのではないでしょうか。家族で過ごす時間が増え、どのように家族の幸せを最大化していくか、考えるきっかけになりました。

ある調査では、在宅勤務になって家事や育児の負担が増えたと答えたのは、男性がおよそ20%だったのに対し、女性はおよそ35%、このうち、子供のいる女性では40%余りに上ったと言われています。

今回のゲストである株式会社メルカリの岩田翔平さんは、2ヶ月の育児休業をきっかけに、夫婦間の家事育児バランスを強く意識するようになったのだそう。そのご経験をnoteにまとめられています。

共働き夫婦のどちらかだけに家事育児の負担が偏ったり、キャリアをセーブすることがないよう、どんな工夫ができるでしょうか。同じく共働きで子育て中の上原さん、松栄さんと共にお話を伺いました。

今回はそのレポートをお届けいたします!

【登壇者プロフィール】

◆ 岩田翔平

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株式会社メルカリ HR Operations Manager
人事プロセスの構築、データ活用を推進。 新卒でエン・ジャパン株式会社へ入社。「エン転職」「ミドルの転職」「AMBI」など複数の転職サイトのPM(APM)を経験し、2018年3月より現職。
プライベートでは7歳、1歳の子どもを共働きで育てる父。子育て世代を中心としたコミュニティづくりのNPO法人運営も行う。
https://note.com/iwacciii
https://twitter.com/iwacciii

◆上原達也
XTalent株式会社 代表取締役

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ハイスキル×ママパパ向け転職サービス「withwork」を運営。
2010年京都大学教育学部卒業後、Speeeに入社。アナリスト、人事、広報などを経て社長室に所属し、新規事業や海外事業の立ち上げに従事。 2017年JapanTaxiに入社し、事業開発を担当。「相乗りタクシー」など国土交通省との実証実験や、法人向けサービス「JapanTaxi BUSINESS」の立ち上げに従事。2019年7月にXTechに入社。10月XTalent株式会社代表取締役に就任。2児の父。
https://twitter.com/uetatsu39
https://note.com/tatsuya39

◆ 松栄友希
XTalent株式会社 執行役員

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新卒から複数の企業を経験した後、株式会社リブセンスにて既存事業のグロース、新規事業立ち上げを担当。
第一子育休復帰タイミング直後に、ITエンジニア向け競争入札型転職サイト「転職ドラフト」をプロダクトマネージャーとして立ち上げる。
また社内においても、子育て世帯が働きやすくなる制度を提案し改善を行う。
2019年9月、XTalent株式会社に立ち上げからJOIN。
https://twitter.com/deka_wanwan
https://note.com/dekawan


自己紹介

岩田:株式会社メルカリで人事部門のマネジャーをしている岩田です。メルカリへは2018年の3月に入社しまして、人事の企画いろいろを担当しています。2018年、入社した年に下の子が生まれまして、2ヶ月間の育児休業を取りました。その間、家事育児はすべてやりまして、そのときの経験で気付きがあり、今は家事育児を完全に妻と半分半分でやっていくという感じでシフトしていってる感じです。

プライベートでは、子育て世代を中心とした地域のコミュニティ、NPO法人をパパ友たちとやっています。新型コロナウイルスのタイミングでは地域のテイクアウトマップを作ったりだとか、パパ友と子供たちだけのピクニックを計画してお母さんたちにフリーな時間を作るといった企画を楽しんでやっています。今日はみなさんと子育てについて考えていければと思っています!

上原:今回のウェビナーを企画しているwithworkの代表をしています、上原です。2010年にITベンチャーのSpeeeという会社に入り、けっこうハードワークをしていたんですが、自分が26歳のときに長女が生まれました。そのときはなかなか育休を取得するとか考えることができなくて、子供が生まれてからも遅くまで働いていたりしていました。

その後、上の子の保活のときに「これはめちゃくちゃ大変だな」と気づきました。保活に対して徹底的にリサーチして、区役所に足を運んでヒアリングしたりしたときに、育児はお互いの得意領域と不得意領域をいい感じにミックスして共同で戦わないと勝てないなと思い、そこからすごくマインドが変わった感じです。

去年の7月にwithworkを運営するXTalent株式会社を立ち上げる機会があり、せっかく新しく事業をやるなら、子育てに関わることをやろうと、現在に至ります。転職のタイミングで次女が生まれて、いまは5歳と2歳の女の子を育てながら代表をしています。

保育園がまだ一部自粛中なので、今日も自宅保育をしながら仕事をしているのですが、娘がテレカン中に乱入したりして、カオスな状態でやっています。

松栄:本日ファシリテーターを務める松栄(まつばえ)です。上原と同じく、XTalent株式会社で執行役員をしています。1社目は人材系の会社に、その後もう1社を経て株式会社リブセンスという会社へ入り、2回新規事業の立ち上げ責任者をやりました。新規事業立ち上げ中に妊娠→出産→育休を取って復帰して、また別の新規事業を立ち上げ、という感じで、子供を産み育て、事業も産み育て、という感じでやってきました。

当時、育休復帰メンバーがまだ少なかったので、会社に対して働きかけて、育休取得可能時期を10歳まで伸ばしてもらったりだとか、リモートワーク可能にしたりだとか、制度を作ったりしました。2019年9月に現職にジョインして、上原と一緒に会社を運営しています。

家事育児のバランス、最初は全然わかっていなかった

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松栄:では、さっそく本題へまいりましょう!今回は質問を2つ用意しています。まず1つめ。「夫婦間での家事育児のバランスは?」

岩田さん:我が家のバランスは、半分半分にするというのが基本的なスタンスです。保育園の送り迎えも半分半分、もちろんお互いのスケジュールとかもあるので柔軟にやっているんですが、基本的にはそんな感じです。

分担としては、お互いが得意というか、苦にならないタスクを担当しようとしています。僕が育休中に一通りの家事はやったので、自分が得意なことであったり、妻と話し合って「妻はこれが楽しそう」「これは苦しそう」というのを見て分担している感じですかね。

松栄:岩田家では、最初から家事育児のバランスを半分半分にする分担がうまくいったんですか?それとも「ここはわかってなかったな」を乗り越えて半分半分に落ち着いたんですか?

岩田:最初は全然分かっていなかったと思いますね。初めはきっちり分けるようにしていたんですが、やっていく中で「これはきついな」というのが見えてきて。例えば妻は料理が好きなようで、そっちのタスクが増えるのは苦じゃないみたいなんですが、お米を研ぐのは嫌いみたいなんですよ。

なので、じゃあお米を研ぐのは僕がやる、とか。あとは妻が朝、早起きして集中して仕事をしているので、朝は僕が起きて子供に食事を食べさせて、保育園に送り出すまで全部やるとか。お互いがパフォーマンスの出やすい時間帯が分かってきたので、時間帯で分担を分けたりもします。

松栄:なるほど。チャットのコメントで、「夫が思う半分と、妻が思う半分は違う気がする」という質問が来ているのですが、最初から「これで半分だよね」という合意って取れましたか?

岩田:難しいですよね。その問題はあると思います。うちも最初はちゃんと半分半分じゃなかったというか、もしかしたら今もそうかもしれないんですが……ただ、これは「目に見える家事」と「目に見えない家事」があるっていう話かなと思っていて。最初は「目に見える家事」を半分半分にしようとしていたんですよ。でも妻のところに保育園への連絡とか、ママ友との調整とか、「目に見えない家事」が生まれているんだなというのを感じました。

「目に見える家事」と「目に見えない家事」がある

岩田:「目に見える家事」だけを半分半分にしようとすると、妻の方に「目に見えない家事」が寄っていってしまうので、今では「目に見える家事」を僕がどんどんやっちゃうことにしています。そうすると自然にバランスが取れて、結果的にイーブンになるというか。

松栄:そこって、岩田さんが夫の立場から探って探って分かったものなのか、話し合いをして分かってきたとか、何かありますか?

岩田:話し合いというか、妻が僕の性格を分かってくれているのもあると思うんですが、「実はこういうことがあって、大変なんだよね」と話してくれています。僕もそれを任せきりにせず、自分でもやってみて、その大変さを理解して「じゃあ他のところは僕ができそうだからやるよ」というふうに少しずつ広げていった感じですね。

松栄:上原家のバランスはどうですか?

上原:うちはそこまできれいに50:50にしていないのと、お互いの仕事やライフイベントの状態で調整するようにしています。正直、この1年くらいは会社の立ち上げでハードだったので、その前から話し合っておくようにしました。「しばらく平日は難しくなるかもしれない!」と、改めて話しておいて、比率を調整してもらったりしていて。

逆に2人目の子の育休明け、妻が職場復帰をしたときは、子供は熱を出しまくったりすることが分かっていたので、僕が調整して対応するようにしたり、それぞれのステージにあわせてバランスを取れるよう調整しました。

「話し合いできれいに半分半分に決まるのか」というのをチャットでもコメントをもらっているんですが、これは僕も本当にそうだなと思っていて。話し合いだけ決めきるのではなく、やりながら「これは僕がやったほうがいいな」とか「これは自信がないからお願いしよう」というのを見て、お互いが何を巻き取ったらいいのかを考えながらやっていくのがいいかなと思っています。

ちなみに最近でいうと、新型コロナウイルス以降、チームとして完全在宅勤務にしているので、食事を僕が作るようになりました。なのでこの2〜3ヶ月くらい妻の手料理を一切食べていないんです。妻が仕事を終わるタイミングでごはんを作っておいて、保育園から妻と娘が帰ってきてみんなで一緒にごはんを食べて、というのがけっこういいリズムなので、我が家なりのいい塩梅ができてきたなという感じです。

松栄:妻の料理を2〜3ヶ月食べてないのはなかなかすごいと思うんですが、上原さんは元々料理ができたんでしたっけ?

上原:多少はできます。でも最近はもうミールキットに頼っていますね。いろいろなミールキットを比較検討して、これだというのを決定して。さらにホットクックを導入して、味噌汁をどういう組み合わせ作ったら最短で最適なものになるか、研究しています。勝間和代さんの家事ハックの本がすごい好きなんですよ。あれに書いているタイミング通りに実行してみて、自分なりに理詰めで家事を最適化したりしていました。

松栄:性格が出ますね(笑い)

上原:この話を妻に言っても「そうなんだ。ふ〜ん」という感じなので(笑い)それぞれにちょうどいいやり方があるんだなと思いました。

相手の仕事を「奪って」みる

松栄:家事育児のバランスは半分半分が良かったり、6対4が良かったり、それぞれの夫婦によると思うんですが、家事の分担を決めるには、仕事とのバランスをとることも必要になると思います。話し合いをするときの心構えとか工夫とかってありますか?

岩田:前提として、そんなに深い話をするわけじゃないんですが、仕事でどんなことしてる? とか、何で悩んでる? というのはごはんを食べながらよくしますね。そうすると、「もっとチャレンジしたいんだな」とか「もっと思い切り働きたいんだな」というのが伝わってくるので、お互いが良いパフォーマンスを出せるように、お互いがもっと働きやすいようにしようというスタンスで聞くようにしています。

僕も仕事を頑張りたい気持ちもありますから、どういうふうにしたらもっと働きやすいとか、自分はこうしたい、というのを「できる・できない」は別として、お互いちゃんと話すようにしています。

松栄:上原家の工夫はどうですか?

上原:意外と話し合いだと決まらないこともけっこうあって。例えば「料理、自分が作ろうか?」と聞いても「いや、別にそこまではいいよ」と言われたりするので、これは「勝手に仕事を奪ってみよう」と。そうして「料理」という仕事を奪ってみたら、妻の負担が軽くなったので、これはやってよかったなと思っています。

けっこう「何をしてほしいか」が言語化できていない、というのもあるんじゃないかなと思うので、ちょっとしたトライアルをやって、検証してみるのは良いんじゃないかなと思います。

というのも、この間、僕が家事代行を選定して、ちょうど妻がいない日に頼んでみたんですね。そうしたら、帰ってきたときに「めちゃめちゃきれいじゃん!」と感動していたので、これは定期的にやろうね、と決まったりとか。

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自分がこれだと思う最善策が、どれくらい満足度向上につながるのかをやってみて、相手の反応とか結果を見て、「これはいいかもしれないな」というのを取り入れる、というのを心がけています。なので、話し合いで意思決定というのは意外となくて、相手の思考がどこに寄っているかを把握するために使うことが多いです。

松栄:コメントで「いったん奪われたい」というのがあり、「仕事は奪うほうがいい」という発見がありますね(笑い)

上原:「家庭もプロダクトだ」というのもいいですね。

松栄:「ビジネススキルが如何なく発揮されている」というコメントもいただいていますが、仕事と似ているというか、仕事での経験が家庭に活き、家庭の経験が仕事に活きというのは、良いサイクルが回っている気がしますね。

上原:仕事でのチームビルディングと同じですね。

仕事と家庭のバランスのキモは、夫婦の話

松栄:お二人の話を聞いていると、「家庭をどう考えるか」というより、夫婦として「パートナーを幸せにしたい」「幸せな毎日にしたい」と思って行動しているんだなという印象を受けました。仕事と家庭のバランスと言うか、夫婦間の分担というのは、「家庭全体」の話というよりは、「夫婦」の話なんでしょうか?

岩田:そうですね、子供が登場してなにかを決めていくというのは、あまりない気がしています。うちの場合、僕も妻も仕事を思いっきりやりたいタイプなので、お互いがいち社会人として思いっきり働くためには、お互いがどうサポートし合うのがいいんだろう、という発想がベースかもしれません。そこが充実していれば、子供に対しても余裕を持って接することができるし、良い家庭になるよな、というのが共通の価値観としてありますね。

松栄:仕事をしている奥さんをリスペクトしている感じが、すごくありますね。

上原:うちの場合も近くて、子供ベースの意思決定いうよりは、夫婦とか家族全体の満足度を起点にして、判断していってる感じがしますね。子供の感情に寄り添いすぎると、逆に振り回されちゃうというか。保育園に迎えに行くと「もっと遅く迎えに来てほしかったのに!」と泣いて文句を言われてへこむとかありますよね(笑い)まあでも子供はマイペースに生きてくれればいいなと思います。

松栄:チャットでの質問に、「奪ってくれる人をどう育てたらいいんでしょう」というのがありますが、どういうふうに言われたら「自分からやろう」と思いますか?

岩田:ここは上原さんがいいんじゃないでしょうか。

上原:僕の場合は何だっただろうと思ったんですが、長女が生まれたとき、妻からなぜか「オムツ処理はパパの仕事ね」と決められたことがあって(笑い)。最初は「なんでなの?」と思いつつ言われたので嫌々やってたんですが、なぜかそこに対して強い当事者意識を持つようになったんです(笑い)

岩田:(笑い)

上原:オムツって出先で大変なことになったりとか、いろいろあると思うんですが、それを経験して、それを妻と「しゃーないな」と笑ったりして、とても変わったなと思います。妻と一緒に乗り越える楽しみを学んだなというか。

共働きでなくとも、公私のバランスが大事

松栄:「両者が働いていないとイーブンでいられないのだろうか」「夫婦が共働きでバリキャリである前提?」という質問がありますね。

上原:うちの妻はあまりバリキャリという感じではなくて、仕事も趣味も楽しみたいという人タイプです。なので、キャリアのためというよりは、やりたいことをやるとか、仕事内容の満足度・充実度と、自分のプライベートの時間が取れているかによって、トータルの満足度って変わってくるんじゃないかなと思います。僕の場合は、そのバランスを見ている感じですね。夫婦が共働きでなくとも、そこは一緒かもしれません。

松栄:奥さんが趣味をやる時間というのを、仕事と同等に大切に考える、みたいな感じですか?

上原:うん、すごいざっくりいうと「妻には活き活きとしていてほしい」という感じですね。

松栄:「スタートからイーブンになるには何かポイントがあるのだろうか?」というコメントもいただきました。最初に妻の方だけが育休を取っていて、復帰してもそのバランスを維持してしまっているご夫婦って割とよく聞く気がするんですが、早い段階で偏ったバランスを戻すために、こういうことをしたらいいんじゃないか?というのはあったりしますか?

岩田:夫婦によって色々違うなと思うところはあるんですが、うちでいうと「送り迎え」みたいに分かりやすい部分をイーブンにしたというのはあるかもしれないですね。それで回らなかったら、また相談して調整していく前提ですが、スタートしたら意外といけた、というのはありました。

松栄:目に見えない家事はいったんおいて、目に見える分かりやすい部分から手を付けるという感じですね。

時間制約で意思決定のスピードが上がった

松栄:質問の2つめ。「今の働き方にして、仕事への影響は?」ということで、岩田さんは保育園のお迎えに行くようになって、自分のお仕事に時間制約が生まれたんじゃないかなと思います。そのへんはどうですか?

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岩田:お迎えに行くようになってからは、17時くらいにオフィスを出るというのがデフォルトになったんですが、結果的に良いことが多かったなと思っています。例えばオフィスでメンバーと一緒に働く時間が短くなるので、以前は「あとで意思決定すればいい」と思っていたようなことでも、短期集中でいろんなことを決めざるを得なくなりました。そういう意識が自分にもメンバーにも芽生えて、意思決定のスピードが上がったなと思います。

それから、僕が常にオフィスにいる状態にすると仕事もそういうふうに回りがちだと思うんですが、オフィスにいないことで非同期でも仕事が回る体制や仕組みが作れたというのも、すごく良かったなと思います。

松栄:マネージャーで時間制約ができると「仕事が回らない」と言われがちだと思うんですが、「非同期で成果が出る仕組み」というのは、どんな工夫をしたんですか?

岩田:明確に変えたことがあって、「オフィスでやる仕事」と「そうでない仕事」を分けました。以前は企画系の仕事と、コミュニケーションの仕事を混ぜてやっていたんですが、オフィスで働く時間が限定されるので、オフィスにいる時間はすべてコミュニケーションにリソースを当てるようになりました。企画を考えたりするのは行き帰りの電車だったり、朝とか夜とかに作っています。

松栄:それで成果は変わらなかったですか?

岩田:むしろ個人もチームも、生産性が高まったんじゃないかなと思います。子育てをしているメンバーも多い中で、時間をずらして働くことがやりやすくなったりとか、パフォーマンスが出やすくなったりだとか、コミュニケーションが活発になったりだとかがありましたね。

非同期で成果を出すためには「ドキュメント文化」が大切

松栄:非同期だと「そのタイミングでその場にいない人に情報がいかない」というか、いびつさが出ることはありませんでしたか?

岩田:これは僕がいるメルカリという会社の特徴かもしれないんですが、評価がパフォーマンスドリブンだということを明確に言っていて、プロセスももちろん大切なんですが、しっかりパフォーマンスで評価するというのが共通認識である、というのは大きいかもしれません。

あとは、ドキュメント文化がすごく強いというのがあるんですね。ミーティングでも必ず誰かがドキュメントを取っていて、基本的には誰でもアクセスできる場所にあるというのがあって。同期しなくてもパフォーマンスが出せるというのは、そこにも理由があるかもしれません。

松栄:なるほど。新型コロナウイルス以降、リモートワークになったときも、ドキュメント文化って役立ってるんじゃないかなと思ったんですが、そのあたりはどうですか?

岩田:めちゃくちゃありますね。それでいうと、うちの会社も一気に全員リモートへ移行したんですが、「意外といけちゃうね」というのがあって。元々非同期で働ける仕組みを作っていたというのは、大きいかもしれませんね。

松栄:上原さんはどうですか?

上原:新型コロナウイルスの前と後だと、すごく変化があったなと感じています。以前は会社の立ち上げ期だったこともあって、遅くまでオフィスにいたりすることもあったんですが、そのときと今とで、成果の違いはそんなにありません。

非同期で、しかも違う空間で仕事をしている環境に適正化せざるを得なくなりましたが、これは労働時間が細切れでも成果が出せる仕組みを考える良い機会になると思います。良い意味で強制的に変わってきているなと感じますね。

あともう1つあるのは、僕自身、「成果を出さなきゃ」って焦っていたということもあって、自分の中でも「成果を出す」ことと「家族の時間を大事にする」のはトレードオフになると、いう思い込みがあることに気付きました。

同じように、「男だから仕事にコミットしなきゃいけない」とか、「女だから自分が家事育児をやらなきゃ」という先入観が、この新型コロナウイルスでリセットされて、フラットになったなというのを感じていますね。

「心理的安全性」が高いチームづくり

松栄:質問が来てまして、「コアタイムをなくしたい、短くしたいと主張すると『打ち合わせはどうするの?』『急な対応ができないよね』と言われ取り合ってもらえない」。時間制約を設けたことで、チーム内でギスギスしたりすることってありますか?

岩田:僕の周りではあまりありません。会社ではいま試験的にコアタイムなしのフルフレックスでやっているんですが、もともと12時〜16時がコアタイムだったということもあり、なんとなくみんなその時間にスケジュールを入れるようにしているのと、あとはもうひとつ、チームとかプロジェクトの仲間たちがお互い働きやすい時間とかパフォーマンスしやすい時間とかをシェアするようにしています。

例えば「今週は夫が出張でいないので、日中は動けません」とか、逆に「夜に動けるのでこの時間にSlackを返します」とか、そういうのをチームのミーティングで話すので、それを察知してお互いフォローし合いながら働いてるっていう感じですね。

松栄:メンバーそれぞれの家庭の事情を割と深く把握するっていうコミュニケーションなんですね。

岩田:僕から深掘って聞くことはしないんですが、話してくれるならそのへんも配慮して、働きやすいようにしたいから、話してくれるなら聞くよ、という感じです。もちろん話したくない人もいると思うので。

松栄:コメント、「子育てしててもパフォーマンスを下げないのはベストなんですが、多くの人が下がるので『まあそうだよね〜』くらいで、おおらかにとらえられるようになりたい」。やっぱりパフォーマンスを維持できる人ばっかりでもないと思うんですね。そのあたりは、どういうふうに向き合っていますか?

岩田:子どもを見ながらとなると、パフォーマンスがやっぱり下がるよねっていう悩みは実際あって、そういうのはオープンに話しています。全員がムキムキじゃないとだめだというのは全然なくて(笑い)、そういう状況の中でも、どういう時間の使い方をしたらパフォーマンスしやすいんだろうね?というコミュニケーションの仕方をしていて。

最近だと、夫の都合でしばらくワンオペになっちゃうという話があったので、じゃあその期間、今までできなかったインプットの時間、オンライン研修とかを集中的に受ける時間にして、その次の月とか、次のクォーターで成果として返るようにしようね、とコミュニケーションを取ったりしていますね。

松栄:コメントでも「パフォーマンスが下がることをチームで話せる心理的安全性!」というのをいただいていますが、確かにすごく心理的安全性が高いチームなんだなというのを感じます。そういうチームにするために工夫されていることってありますか?

岩田:いろいろやっている気がするんですが、一番すぐできて大切だなと思うのは、自分もそういうことがあるよ、というのをすごくオープンに言いますね。マネジメントする側って「いろいろできて当たり前」と思われるかもしれないけど、自分も子供のいろいろでこの週ぜんぜん仕事ができなかったんですよ、というのをオープンにしていくことで、みんなの弱っていることとか、大変なことをできるだけ引き出すというか。自分から開示するのは大切だなと思います。

日々のコミュニケーションを取る継続性が大事

松栄:ここはもっとみなさんに伝えたいなというところがあれば、お話いただきたいと思うんですが、何かありますか?

岩田:今日は「我が家のケース」という感じでお話をしたんですが、色々コメントをいただいたように、それぞれのご家庭とか夫婦によって、理想の働き方とか家事育児の分担って違うよなと思っています。

我が家は色々経て今のスタイルになってきているんですが、最初はコミュニケーションだったなと思っていて、僕だけでは築けなかったなというか、妻から少しずつ発信してくれて、「こうしたい」というのを伝えてくれたのは、今思うとすごく嬉しいことだなと思います。

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1回の話し合いでガラッと変えるのって難しいし、揺り戻しもすごく大きいと思うので、今日みたいな話が会話をするきっかけになるといいなと思いました。そこから徐々に会話を重ねていって、お互いがいい働き方、暮らし方になっていくといいなーと。

松栄:確かに日々コミュニケーションを取っていく継続性がすごく大事ですよね。上原さんはどうですか?

上原:今日の参加者の中には、子育てをしながら働くことに会社側や上司の理解が得られなくて苦労されてる方もいらっしゃるんじゃないかなと思います。そういうときの解決策として、環境をガラッと変えるというのもあると思うんですが、やっぱり、子育てに関わったことがない人というのは、分からないから遠慮しちゃう、ということもあると思うんですね。なので、発信をしていくとか、自己開示をしていく、というのは、トライする価値があるんじゃないかなと思っています。

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今回の新型コロナウイルスによる保育園の自粛とか休校で、みなさんめちゃくちゃ大変な思いをしたと思うので、本当にお疲れさまでしたって言いたいんですけど、だからこそちゃんと発信していくのって大事なんだな、というのを個人的に感じました。

それは個人と会社の関係でもそうですし、社会においても、子育て世代の声ってちゃんと出していかないと届かない人には届きません。ちょっとキャリアとはそれる話になりますが、そんなことを思っています。


質疑応答タイム

松栄:質疑応答「逆に失敗したな」っていうこと。何かありますか?

上原:小さな失敗はめちゃくちゃ繰り返してきてるんだろうなという感じがしますね〜。子育てしていると日々大変なので、大変さと楽しさの中で忘れているというのはあるかもしれませんが……。

松栄:あのときに戻れるならこうしていたな、というのはありますか?

上原:僕は戻れるなら育休を取っていただろうな、というのはあります。

岩田:ジャストの答えじゃないかもしれないんですが、1年くらい前からコーチングを受けるようになって。すごく良かったので、チームマネジメントでもコーチングのコミュニケーションを心がけているんですが、それを妻にも使っている……というと怒られちゃうかもしれないんですが(笑い)、やっぱりコミュニケーションも妻がしたいこととか、何を実現したいかというのを引き出すようにしています。できてないかもしれないけど(笑い)仕事でやったことって家庭に活きるよなというか、チームマネジメントだよなと思うときがあります。

松栄:逆に、家庭のことが仕事に活きた、というのはあったりしますか?

岩田:行ったり来たりしている感じですよね。仕事のことが家庭に活きたり、家庭のことが仕事に活きたり。家庭だと、やっぱり子供とかって思うように動いてくれないんですよね。仕事だとみんな大人だから動いてくれるんですけど、それって素の状態だとそうじゃないよなと思っていて。

ある種、マネジメントでもできるだけ素の状態を引き出すようなコミュニケーションをやっていくと、「実はもっとこういうことがしたかった」とか「これ不満だった」というのが出てきたりするので、そういう瞬間を作ったりしていますね。

上原:子供とのコミュニケーションは本当に勉強になるなと思いますね。伝え方の工夫とか、言葉の使い方とか。

松栄:「お互いのひとり時間はどうやって捻出していますか?」どうですか?

岩田:うちは見えない家事を妻がやってくれている自覚があるので、基本的に妻が「こういう時間を取りたい」と言ったら最大限応援する感じですね。イベントとかも嫌な顔をせずに「いってきてください!」と送り出すというか、それも含めて楽しんでやってくれているのが結果的に家族の幸せになると思うので、気持ちよく送り出すという感じです。

松栄:ご自分の時間を作る場合はどうしていますか?

岩田:素直に言いますね。ひとりで本を読んだり考えごとをしたりしたい思いが強いので、お互いが負担にならない時間で出かけたり、素直に「こうしたい」を言い合ってる感じです。

上原:うちも同じくですね。特に土日とかは、どちらかが子供を公園に連れて行って、どちらかが一人で好きなことをするとか。それぞれが意思表示をしながら時間を使っている感じです。

松栄:「家事育児のアウトソースとか、家電やベビーシッターサービスなど、これは重宝しているというものはありますか?」おふたりともいろいろ工夫されていると思うんですが、これは良い!というものはありますか?

上原:最近初めて家事代行を使いましたが、とても良かったです!岩田さんの奥さんの記事で家事代行のHOWTOをまとめたものがあるんですが、それをしっかり読み込んで(笑い)、記事を参考にして自分の家でしてほしいことのアジェンダを作って送ったんですけど、仕事に集中している間に部屋がきれいになったのですごく良かったです。ちなみにCaSyさんを使いました。

参考記事:

岩田:うちもCaSyさんの恩恵にはものすごい預かっていて、ルーティンでアジェンダを送ってやっているので助かっていますね。

上原:あとはやっぱり食洗機とか、ドラム式洗濯機とか、定番だと思うんですけど、無い生活にはもう戻れないと思いますね。ホットクックは調理に重宝しています。

松栄:最後に一言、お願いします!

岩田:そうですね、今日の話が家庭での会話のきっかけになったらいいなと思います!

松栄:今日はありがとうございました!

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構成:安里美紀

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