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会社の成長とともにDEIのカタチも変わる。属性だけでなく、多様な価値観のインクルージョンへ | 株式会社マクアケ

「フェアな労働市場をつくる」をミッションに掲げるXTalentは、DEI向上を目指す企業を対象としたアンコンシャス・バイアストレーニング(以下、UBT)を提供しています。

様々な企業のDEIの在り方にフォーカスし、広く社会に発信することを目的にした「#DEIのカタチ」シリーズとして、UBTを受講した株式会社マクアケ 人事本部執行役員 坂本 めぐみ氏、人事本部マネージャー 林 輝葉氏にインタビューしました。

マクアケは、より良い世の中に向けたチャレンジを応援するアタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」を提供しています。この数年で社員数が急激に増えたことにより、DEIの観点で新たな課題が見えてきたため、その施策の一環としてUBTを実施しました。

今回は、急成長中の組織におけるDEIの在り方やUBTの感想、他企業へ伝えたいことなどを伺いました。

【坂本 めぐみ氏 プロフィール】
大学卒業後、IT関連企業にて人事・総務を経験後、大手芸能プロダクションにて人事部門立ち上げを担当。第一子出産後の2017年5月、管理部門の立ち上げメンバーとして株式会社マクアケに入社。2021年4月より執行役員品質保証本部兼人事本部長として審査、CS、人事部門を管掌する。

【林 輝葉氏 プロフィール】
大学卒業後、大手人材会社に入社し採用、人材開発、組織開発等人事領域で幅広く経験を積んだ後2021年1月株式会社マクアケに入社。
同年11月より人事本部の組織開発・採用チームのマネージャーに就任。


組織の成長によって向き合うことになった
「価値観のインクルージョン」


ーーマクアケ様は、DEIに対してどのような姿勢で向き合っているのでしょうか。

坂本:当社は、新たなチャレンジを尊重するというコンセプトでサービスを展開しているため、創業当初から、ダイバーシティを大切にする姿勢は組織内に根付いていました。そして今も、すべての人が尊重される組織をつくるのは企業の責務であると捉えています。

企業価値向上の観点でも、多様化する顧客ニーズを把握したり、社員の多様性を活かしてクリエイティビティを発揮し、生産性を高めることは重要だと考えています。


ーー人権を尊重されてきたマクアケ様でも、企業の成長とともに新たな課題が生じてきたと伺いました。どのようなものだったのでしょうか。

坂本:ここ数年で社員の採用が進み、社員数が200名を超えたあたりから、新たな観点でDEIを意識しなければならないと感じる場面が出てきたんです。

当社はジェンダーダイバーシティにおいては、創業役員に男性と女性の両方がいたこともあり、かなり進んでいると思います。

一方で、課題感が生じていたのは、バックグラウンドやライフスタイルの多様性を受け入れ、活かせるようにするインクルージョンでした。5年ほど前は社員数がわずか20数名で、年代もライフスタイルも近しい社員で組織が構成されていましたが、年月が経つにつれ、社歴が長い社員は結婚や出産、介護などを経験するようになり、ライフステージが変化してきているのです。

そして近年は社員が急増し、外国籍の社員も入社したことで価値観がさらに多様になってきています。それぞれが抱えている生活の事情など、職務を超えたところにも想像力をはたらかせて多様性を活かす土壌づくりに向き合う必要が出てきました。

当社の社員は皆、マクアケのサービスに惹かれて集まった仲間ですので、ビジョンへの共感度には高いものがあります。その仲間がさらに高いパフォーマンスを発揮するには、価値観のインクルージョンに対して理解と行動を浸透させる必要がありました。

林:2021年から社内で実施しているエンゲージメントサーベイの結果からも、当社の社員のエンゲージメントは高いものの、「働き方」への課題があることがわかっていました。

社員が増えたことによる働き方の多様化のみならず、コロナ禍によって世の中全体でも働き方の価値観がアップデートされており、漠然とした不安を抱える人が多くなったんです。特に、これから様々なライフイベントを迎える世代の社員が、自分の人生のステージが変わっても同じように働けるのか、悩むケースが増えていました。

ーーそのような課題に対して、どのようなことに取り組まれていますか。

坂本:2021年にHRポリシーを策定し、そこに「多様」という言葉を盛り込みました。「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」というビジョンの実現に向けたカルチャーを醸成するために、多様な価値観やバックグラウンドをもつタレントが活躍する環境をつくると宣言したんです。

「多様性」という言葉の解釈は人によってばらつくと思うので、まずは多様性がなぜ必要なのかを明確化することから始めた形です。そうすれば、当社がインクルージョンすべき多様性の認識が社員間で揃うだろうと考えました。

このHRポリシーは採用ページにも掲載して、社内だけでなく社外にもコミットメントする姿勢を示しています。

林:働きやすさの向上を目的とした制度や施策の策定も、さまざまな社員の声を取り入れながら進めています。

その一方で、「DEIのこの問題に対しては、こう対処すべき」とシンプルに答えが出しにくくなっていることを切に感じています。人事に届いた意見に着実に対処するだけでなく、HRポリシーに則って社員がより生き生きと働く環境をつくる根本策をやらなければならないと感じていました。


UBTによって、組織内に
「共通言語」ができた


ーー今回、なぜUBTを行うことになったのでしょうか。また、経営合宿の貴重な時間の一部を使って実施いただきました。その背景や経緯について教えてください。

林:UBTを実施した理由には、「攻め」と「守り」の2つの観点がありました。まず「守り」の理由としては、対外的に発信する機会が多い役員陣に、リスク対策としてDEIの意識をもってもらうことです。

そして「攻め」の観点では、UBTは社員がより生き生きと働くための根本策のひとつになりうると考えました。社員一人ひとりに違いがあると認め合った上で、その違いを活かしながら競争優位性を築いていくことは、マクアケならできるのではないかとの期待もあったのです。価値観の多様性に向き合った結果として、組織を強くしたいとの思いがありました。

そして、DEIは当社の成長のカギを握る大事なテーマだからこそ優先度を上げて学ぶべきだと思い、役員合宿の時間を割いてUBTを実施しました。

坂本:私も含め役員陣がDEIの意識をもつことは、欠かせない取り組みだと考えました。というのは、当社はかねてより社内コミュニケーションを重要視してきたからです。役員も現場のメンバーと対話する機会を積極的につくっています。

だからこそ、アンコンシャスバイアスの観点はなおさら重要になります。対話を重ねて社員に向き合っているつもりでも、周囲から見たらそこに偏った思い込みが存在するケースもあるかもしれません。まずは役員陣から、もう一歩の想像力をはたらかせられるようになり、組織全体にDEIの認識を広めたいと考えていました。

ーー坂本さんは実際にご受講されて、どのような気づきがありましたか。

坂本:まずは、リラックスした雰囲気で受講できたことがよかったです。DEIのトレーニングと聞くと少なからず緊張感が生まれると思いますが、カジュアルに進行いただいたおかげで、肩肘を張らずに参加できました。

アンコンシャスバイアスチェックのレポートを通して自分自身のバイアスに気づけましたし、お互いのレポートを見せ合って意見交換するワークもあったので、自己理解だけでなく相互理解も深められたと思います。

そして何よりの収穫は「役員陣の共通言語ができたこと」でした。UBT受講後は、何気ない会話でも「坂本さんは、このバイアスが強く出ていたよね」「私はこのバイアスがあるから、今後向き合っていかないと」などと、お互いのバイアスについて話しやすくなりました。UBTによって共通言語が得られて、お互いを理解できているからこそ気軽に話ができているのだと思います。


ーー他のご参加者からは、どのような感想が出ていますか。

林:アンコンシャスバイアスの知識を得た上で、自分の傾向を把握できたこと。そして人によってバイアスの違いがあると理解できたこと。この2点が有用だったとの声が多くあがっています。マネジメントにおいて、一人ひとりの価値観に寄り添いながらコミュニケーションすることの重要性が腹落ちしたようです。

さらに今回、社員にもDEIサーベイを行い、その結果をUBTの場で共有しました。サーベイの結果から、人事制度や社内行事ひとつをとっても人によって心理的な受け止め方が様々であることがわかり、社員の価値観が多様化していることを改めて認識する機会となりました。


創業期からのDEIへの意識が、
中長期的な企業成長につながる


ーーDEIへの向き合い方で悩まれている他企業の皆さまへ、メッセージをお願いいたします。

林:今後、DEI推進は取り組んでいる組織が褒められるようなアドオンのものではなく、やらなければ社会から選ばれない企業になってしまうと思います。

その方法論には唯一絶対の正解はなく、当社がそうであったように、企業のフェーズによって向き合うテーマは変わっていきます。自社において重要なDEIのテーマを見出し、企業の成長につながる施策を行うには、経営層や人事部門が視野を広げておくことが不可欠です。自社の価値観ありきで施策を実行したり、自己学習だけでDEIに向き合ったりするのではなく、社外の方の協力もいただきながら取り組むのがよいと思います。

坂本:今回、私自身がUBTを受講して、このような対話の場を設けることは極めて重要だと思いました。知識だけなら本でも得られますが、メンバー間で共通言語をもてるのは、対話の場ならではの価値です。

本で学んだだけだと、他者と話をする際にも持論を伝えるだけになってしまいがちですが、対話をした経験によって「あの時の、このバイアスのことだね」などと、共通言語を軸に本質的な話がしやすいように感じています。

また、ベンチャーの創業期はメンバーの同質性が高い方が意思決定が早く進むとは思うものの、組織が小さいうちからDEIを意識しておくに越したことはないと考えています。規模が大きくなってから多様な人を取り込むより、早い段階からその意識を高めておいた方が、中長期的には企業の成長につながると思うのです。

たとえば、日本企業で多く課題に挙がるジェンダーの観点では、当社は創業時点で偶然にも男女のメンバーがいたことが影響し、その後の拡大期においても男女比率がよい形で保たれました。ジェンダーの格差が問題になることなく、事業の成長に集中することができています。


ーーDEI推進の観点で、今後の展望をお聞かせください。

林:UBTの参加者からは、アンコンシャスバイアスへの理解が深まり、日々のコミュニケーションで意識するようになったものの、具体的にどう実践するか迷いもあるとの声が出ています。そのため、次のステップとして継続的な取り組みが必要だと考えています。エンゲージメントサーベイは今後も定期的に行うので、まずはサーベイの結果に向き合う場をつくる予定です。

坂本:当社は、HRポリシーによって「何をもって多様とするのか」の定義をしたところですが、どのような多様性にどこまでアンテナを張るのかは、会社の成長に沿って変化していくでしょう。これからも、私たちのビジョンやHRポリシーという拠り所を守りながら、その時々に応じた施策を行いつつ、DEIの在り方についてはアップデートし続けたいと思います。


UBT受講当日の様子



▼ 「#DEIのカタチ」シリーズはこちら

▼ マクアケ様のHRポリシーこちら

XTalent主催・共催 DEI関連イベントのレポートはこちら


ーSTAFFー
企画:筒井 八恵(XTalent株式会社)
取材・執筆:御代 貴子
撮影:森田 純典

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